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NPBアンパイアスクール

「ストライク!」。冬の空にきびきびとした初々しい声が響いていた。

 昨年末、日本野球機構(NPB)が主催するアンパイアスクールが行われ、3度目の今回は東西で約80人が参加した。6日間で宿泊費、食事を含み8万3000円。軽い気持ちで受けられるものではない。カリキュラムも午前9時から午後4時までが実技、午後7時から9時半までは座学となかなかにハード。今回は17歳から65歳、NPBでプロの審判員を目指す者から草野球での審判を極めようという人まで多士済々だ。

 高橋修人さん(17)は名門の横浜高野球部3年生。主に内野手としてプレーしてきた。しかしトップ選手が集まる同校では「素質のない選手はプロにはいけない」という現実を思い知る。大学でプレーを続ける道もあったが「大学に行ってもやれるのは4年間。社会人では両立も難しい」と思い至ったときに考えたのが、「1年のときから手伝っていて面白い」と感じていた審判員への道。「審判なら長く野球にかかわることができる」と応募した。

 甲子園の常連校に育て上げた渡辺前監督からは「頑張ってみろ」と激励を受け、1学年上でプロとなった浅間、高浜(ともに日本ハム)からは「お前なら大丈夫」と背中を押された。「先輩たちの試合をジャッジしたい」と夢を見る。

 木村淳子さん(28)は前年に続き2度目の受講。昨年のスクールがきっかけで女子野球から声がかかり、建築関係の工場で働きながら採用試験を受け昨年は塁審としてデビューした。

 1年目は「野球が好き」という思いから、ネットでスクールの存在を知って参加した。実際に塁審を務め、「思うようにできず悔しい思いをした」と言う。小さな体で男女の体力差も感じるが、なにより審判としての技術を磨く場所がなく2度目の受講となった。

 「去年は野球が好きだというだけで来た。今年は審判員として来ました」と力強く答えた。目標を尋ねると「NPBなんて大きすぎて目標にならない。まずはうまくなりたい」と真剣なまなざしを向けた。

 「(延長になると)ドラマも中止になるし野球なんて嫌いでした」。細田美保里さん(23)はそう笑う。2013年の楽天初優勝に「鳥肌が立った」と、嫌いなはずの野球のとりこになった。

 漠然と「野球にかかわる仕事をしたい」と思っていた矢先に見つけたスクールに初参加した。野球はおろか、運動の経験もほとんどない。母親からは「どんくさいからやめなさい」と言われたが、スーパーでフリーターとして働きながら「来年も参加したい」と夢を見る。

 職業としての審判員を目指す一方で、趣味の領域で“極めたい”という人もいる。奥村俊さん(65)は神宮外苑を中心に首都圏で行われる草野球をさばく「外苑審判倶楽部」の一員。米国で2週間の講習も受けたという奥村さんは「すぐに忘れちゃうから、確認のために来た。スキルアップしたい」と話す。

 スクールの成績優秀者のうち数人は、2月のプロ野球キャンプで最終試験に臨む。そこで合格すれば研修審判員として独立リーグに派遣され、1~2年のうちに育成審判員に昇格すればイースタン・リーグやウエスタン・リーグをさばき、正審判員への道が開ける。昨年は6人がキャンプの最終試験に臨み、4人が研修審判員となった。

 2013年のスクール1期生だった青木昴審判員(22)は今年、NPBの正審判員への昇格が決まった。「目標を達成できてうれしい」と目を輝かせる。今回のスクールでもインストラクターを務めた「スクールは自分人生の中で最大の転機になった」と振り返る。青木審判員は特に成績がよく“飛び級”で育成に昇格。NPBの井野修規則委員は「初めから才能があった。3年から5年のうちには1軍で審判を務める可能性がある」と期待している。

 たとえ優秀な選手がそろっていても、審判がいなければ試合は成立しない。厳格なルールでさばき、的確なジャッジがあるからこそ野球はエンターテインメントとして多くのファンを集める。井野さんは「できればもっと多くの人に参加してもらって、競い合う中で審判員が育っていってほしい」と今後もスクールの発展を願っている。(芳賀宏)
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